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「オーケストラピットを使用してのバレエ公演実施レポート」2020.9.23~27

はじめに

これまでに各演奏団体・芸術団体がCOVID-19対策のために行なってこられた実証実験を参考に、9月26日・27日に東京文化会館大ホールで上演された東京バレエ団「ドン・キホーテ」公演での演奏レポートを、主催者・劇場のご理解を賜り公開致します。簡単なものではございますが、大劇場のオーケストラピットを本格稼働させての総合芸術分野において、活動再開に向けた一つの事例として、参考まで、皆様にお役立ていただければ幸いです。

2020.10.22
シアター オーケストラトーキョー

オーケストラピットを使用してのバレエ公演実施レポート

◆2020年9月17日(木)東京文化会館大ホール・オーケストラピット検証

オーケストラピット内の空気循環の検証が劇場主導のもと行われ、実見した。
250cm/190cm/100cmの深さに下げ、扉を閉めた状態でスモークを充満させてから、 プロンプター扉、上・下手乗り込み扉、サイド壁窓を順次開けた。
250cmおよび 190cm深さにおいては、上・下手乗り込み扉、プロンプター扉を開口することで、1分程度でピット内の空気入れ替えが認められ、開口扉が多い程効果がより見えた。また、ピットの深さについては東京文化会館においては、100cmでは奈落へのスモークの引き込みは見られず、より深さのある方がより早く効果が見えた。( 換気の条件は劇場によって異なる。)

全ての扉を閉め、スモークマシーンで煙を溜める様子全ての扉を閉め、スモークマシーンで煙を溜める様子。

上層に上がった煙は落ちてこず滞留~ステージ側に流れていく。ピット内の扉を2箇所~3箇所開けると、1分程度でピット内の煙は扉外の奈落に吸われ、上層に上がった煙は落ちてこず滞留~ステージ側に流れていく。

オーケストラピットからの、空気の流れの様子を確認することができた。オーケストラピットからの、空気の流れの様子を確認することができた。

上記の結果により、ピット内環境に心配が無いと主催の判断を得、弦楽器の編成を8型とし、250cm深さで、ワグナーピット使用、演奏中は上下手乗り込み扉およびプロンプター扉のほか、支障のない窓の、計5箇所を演奏中も開口としてセッティングを行うこととした。


その他のピット内対策

備品の消毒:
ピット内の演奏用椅子、譜面台、譜面灯は抗菌加工がされているため、その仕様にもとづいた。(スタッフによる手袋着用での設置後は原則として公演終了まで奏者以外は触らず、拭き取りが必要な場合は乾拭きまたは水拭きを行うこととした)。

演奏上の対策:
GP・本番とも弦楽器・打楽器はマスク着用。木管セクションは個人サイドに、金管楽器はセクションのサイドおよび前方飛沫防止フィルムを置いた。また、管楽器には結露水の回収として足元に敷く給水シートと、個別の廃棄用ゴミ袋を公演毎に配布した。

その他のピット内対策 その他のピット内対策

その他のピット内対策 その他のピット内対策 その他のピット内対策

演奏者間の配置:
指揮台から1プルト奏者までの間は120cm以上とした。(6型→8型演奏への増員としたが、予定通りの間隔をとることができた)。弦楽器同士のサイド間隔は80cm以上とした。 弦楽器の譜面台は、通常通り1プルトに1台とし、譜めくりが可能な範囲での距離をとった。

管楽器同士のサイド間隔は、当初全ての奏者サイドに飛沫防止のフィルムを設置の予定であったが、金管に於いてはアンサンブルのしづらさがあり、奏者の了承を得てセクション間にのみ設置した。(金管楽器の前方に位置する弦楽器セクションとの間には、飛沫防止フィルムを奏者の目線を邪魔しない高さの限度で設置した。)また、管楽器の周辺の楽器については、全マスク着用を原則とした。

<その他のピット外対策>
・管楽器音出しの際は、音出し用の控室もしくはピット内とした。
・手指アルコール消毒の徹底(各部屋の出入り口・ピット出入り口に、アルコール濃度70% 以上の消毒液を設置)。
・到着入室時の検温を実施
・演奏時、飲食時以外のマスク着用

◆RH 実施対策:2020年9月23日(水)~24日(木) 東京文化会館 リハーサル室A

楽員に対しては、事前のPCR検査および抗体検査は行なえていないが、金銭面の負担が可能な場合は実施が望ましいと考えている。そのため、オーケストラピット内に比べ換気状況が万全ではない環境と、広さとして密である状況(前後左右の間隔1.5m~2mを欠ける)、滞在時間が長時間となることから、飛沫の防止・防御と両面からの対策を行った。

  • 弦楽器、打楽器奏者はマスクの着用を原則として義務付け、実施した。
  • 指揮者はマスクまたはフェイスガードの着用を義務付け、口元を覆うフェイスガードを着用した。
    (指揮者は事前にPCR検査を受けている)
  • 木管楽器および金管楽器個々のサイドには、飛沫防止フィルムの設置を行った。
  • 金管楽器は奏者の協力を得て結露水飛沫を抑制させる目的で楽器用マスクを装着した。それにより楽器からの飛沫はある程度抑えられると考え、同楽器セクション内のフィルム設置は奏者の同意を得た上で2日目のRHでは外して行った。
    但し、前方の弦楽器セクションとの境には、奏者の視界を遮らない高さの防止フィルムを設置したままとした。)
  • ※但しこれらの対策は奏者側の演奏上の負担は否めないため、密状況を回避できる場合には、推奨するものではない。
  • 管楽器の結露水対策として、各奏者毎に給水シートと廃棄用のゴミ袋を配布した。
    (各自個別のゴミ袋に捨て口を縛った上で、回収用の専用ゴミ袋に廃棄)
  • RH2週間前からの検温および体調管理表の記入と提出を義務付けた。
  • 1時間毎に15分休憩を設け、非常扉を開けて換気を行った。(扇風機、サーキュレーター併用)


◆対策をとってみて 楽員からの感想 ※全体アンケートではございません。

弦楽器、打楽器奏者(マスク着用)

  • 長時間となるとかなり息苦しくなってくる。(1日目:6時間実施。)
  • 顔が隠れていることでチューニングが合わせづらい。単純に耳からの音だけではなく、顔に受ける響きとしても音を聴いているということなのかと思う。その時だけマスクをずらしている。(Vn)
  • 弦楽器は1つの楽譜を見ているので、普段より間隔をとるといっても離れるのはなかなか難しく、あまり差が無かったように感じたが、咳をしなければ声を出すことも無いため問題は無く受け止めた。
  • マスクは楽団から提供されたマスクを使用した(本番はグレーの指定色)。長時間となるRHでは機能的にも 長時間の着用にも耐えるものを着用したことで改善した。指揮者も透明のマスクを着用し大変暑そうだったがこの状況下で仕方の無いこと。対策によって安心して仕事が出来た。
  • 各所にパーティションが設置されていましたが、存外全体の響きには影響が少なくあまり問題なく演奏が出来た。ただ管楽器セクションで奏者同士(1番、2番奏者) の音のコンタクトが取りづらくなっていた様子。
  • 奏者同士の間隔も普段よりは開けていたが、パーテーションがあるよりは音への影響は少ないかと思われる。
  • 東京文化会館では換気の為、通常よりずっと深くピットを下げて使用したが、元々響きが良いホールということもあ音響にはさほど問題は無いように感じた。(指揮者は高い指揮台で振り、奏者はそれを見上げる、という状況にはなった。)しかしコロナ禍のみの限定した状況では演奏出来ないよりずっと良く、一時的な措置と思っている。

木管楽器(飛沫防止壁設置)

  • 演奏の際は、衝立があるため普段と音の聞こえ方に多少の差はあったが、リハーサル中にも慣れることが出来  たので、演奏に大きな支障が生じるなどの影響はなかったが、無い方がアンサンブルはしやすいかなと思う。
  • ピット内では、やはりパーテーションに囲まれることもあり、弦楽器がさらに聞こえづらくアンサンブルがとても難しかった。
  • 今後同じような環境で演奏する場合は、リハーサルやゲネプロを自身で積極的に録音し、バランスなど確認をできると良いと思った。
  • パーテーションがあることによって無意識に安心したのか、マスク無しで二言三言、会話してしまっていた。パーテーションにより声が聴き取りにくいので自分の声も自然と大きくなり反省。やはり演奏上の相談やディスカッションなどの会話は、その場でパッと行うため、機敏にマスクをつけられるよう意識したいと思った。
  • 今は出来得る対策を施してやることが最優先だと思う。もちろんパーテーションがあると音がこもってしまいちょっと離れた楽器の音が聴こえにくかったり、ピットが深いのも響きを感じにくかったりといろいろあるが、そういうのは世の中の状況が良くなればいくらでも改善できるので、とにかくリスクを減らすことを優先してやっていくのが最良ではないかと思う。

金管楽器(飛沫防止壁、楽器用マスク装着)

  • 飛沫防止壁(フィルム)によって、恐らく見た目以上にアンサンブルのしづらさを感じている。
    ( 2日目に一部奏者間の壁を取り外したことによって改善された。壁を置く位置にもよっても変化。)
  • 楽器用マスクを装着した場合、長時間になってくるとかなり疲労感が出てくる。
  • 本番で外した時の差がある。

指揮者

演奏者間の距離でアンサンブルがやりにくというよりも(これについては改善できると思っている)、演奏間のフィルム壁によってアンサンブルがやりづらいんだろうなということが聞いて取れた。
(2 日目に壁を取り外したことで、それが改善された。)
楽器用マスクを装着しているという音は明らかに聞こえる。(RHで音質やバランスを整える上では、良いことではないが、致し方ないと受け入れる)


その他、対策に関して

  • マウスシールドの飛沫拡散防止効果について有用性は高くないとされているので、特にマスクのできないダンサーの方も集まるスペースでは自身がマスクを正しく装着して気を付けたいと思った。
  • 人々の不安もまだ残る中での公演だったかとは思うが、演奏者も公演をご覧になって下さったお客様も、演奏者の間に衝立が立っているなどの感染対策の様子を見て、少し安心感を得た方もいた様子だったので、その点は良い対策だったのではと思っている。
  • 早急なガイドライン発表があったことで、体調管理もされ、安心して現場に向かうことができた。